「健康と病いの語り」教育的活用ウェブサイトへようこそ。

このサイトは、医療・介護に従事する人々の職業教育・研修に、また病いや障害に対する一般市民・児童生徒の理解促進・意識啓発に、「健康と病いの語り」を活用しようとしている人たちのために作られています。

具体的には?

具体的には「認知症の語り」「乳がんの語り」「前立腺がんの語り」「大腸がん検診の語り」「臨床試験・治験の語り」などのウェブページに収録されている語りのクリップを用いた講義や授業のスライド、新たに教育用に開発したビデオクリップ(じっくり語りに触れられるロングバージョンビデオやテーマ別のトリガーフィルムなど)を提供しています。 また、マイページには、頻繁に利用する語りのページを、お気に入りクリップとして登録できる機能も搭載しています。

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教育的活用について

DIPEx-Japanでは、2007年に語りのデータベースを作り始めた時点から、これを医療者教育に活用することを考え、大学や専門学校で医療者教育に携わる方々に呼びかけて、語りのクリップやテキストを授業で使っていただき、学生の反応や使い勝手についての評価をお願いしてきました。

実際に授業や研修に使ってくださった皆様からのアンケートの結果や、教育的活用についての学会報告等について、以下にご紹介します。

健康と病いの語りを使った授業の展開教育的活用に関する学会報告患者の語りを教育に導入する意義

健康と病いの語りを使った授業の展開

  • DIPEx-Japanではサイトに公開している語りを教育・研修等に用いられる場合は、事前にご一報いただくようお願いしています。連絡なしに使われている方もおられるかもしれませんが、映像・音声を用いる場合は語り手ご本人の肖像権の問題もあり、テキストのみの引用の場合でも利用目的・状況を確認するために申し込みをお願いしています。DIPEx-Japanが把握している利用件数は、年々増加しています。特に2020年にはコロナ禍で医療現場での演習・実習等が制限され、これまで以上に利用が拡大しました。

  • お申し込みいただいた方には、どのように利用されているかを把握するためにアンケート協力をお願いしています。2021年度にアンケートに回答した46名についてみると、活用目的の約7割が学生教育、約3割は専門職の研修、市民向けの講習会等となっています。学生教育の内訳は、看護がもっとも多く、医学、薬学、理学療法など医療系、福祉系が8割近くを占めています。集計結果(2021年度、n=46)の詳細はこちらをご覧ください。

 

語りを使った科目

がん看護学実習 成人看護学
成人看護援助論 成人実践看護学
慢性期看護援助論 慢性期看護学
老年看護学 在宅看護論方法論
基礎看護学実習 生涯発達看護学概論
精神障害作業治療学実習 予防検査学
医療コミュニケーション 臨床コミュニケーション論
心理支援応用 医療心理学
社会学 社会調査実習
医学入門 医療福祉論
保健医療福祉行政論 内部障害理学療法学 など

語りの活用方法 n=46

視聴後にグループディスカッション 20
視聴後に課題実施 8
視聴のみ 6
視聴後に感想記入 4
視聴と講義 2
テキストで課題実施 2
その他 2
視聴前後に課題実施 1
ロールプレイ 1

データベースごとの利用総数(複数回答)n=46

乳がんの語り 24
認知症の語り 17
前立腺がんの語り 9
クローン病の語り 8
慢性の痛みの語り 7
臨床試験・治験の語り 4
大腸がん検診の語り 3
障害学生の語り 3
新型コロナの語り 1

2021年度に語りを活用した大学(公表を許可した施設のみ)

・北里大学医学部
・北里大学医療衛生学部医療検査学科
・北海道リハビリテーション大学校
・県立広島大学保健福祉学部
・東京経済大学
・川崎医療福祉大学
・日本赤十字看護大学
・日本赤十字秋田看護大学
・山梨県立大学
・山梨大学
・聖路加国際大学
・東京情報大学
・目白大学看護学部
・新潟青陵大学
・東京医療保健大学
・自治医科大学看護学部
・新潟県立看護大学
・京都大学医学部人間健康科学科
・日本福祉大学
・岐阜薬科大学
・北陸大学薬学部

教育的活用に関する学会報告

<2018年度>

日本看護学教育学会第28回学術集会(2018年8月29日)

交流セッション12
タイトル:患者の病い経験を尊重できる 医療者育成のための 教育プログラムを考える
著者:森田夏実(東京女子医科大学、DIPEx-Japan)ほか

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日本看護学教育学会第28回学術集会(2018年8月28日)

示説P-1-17
タイトル:一般心理学講義におけるDIPExの活用:大学教育における患者インタビュー動画教材の有用性
著者:いとうたけひこ(和光大学)ほか

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日本看護学教育学会第28回学術集会(2018年8月29日)

交流セッション15
タイトル:映像と音声で伝える「慢性の痛みを持つ人とその家族の語り」データベースを用いた看護教育への活用可能性を探る
著者:佐藤幹代(自治医科大学、DIPEx-Japan)ほか

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日本心理学会第82回大会(2018年9月26日)

交流セッション15
タイトル:心理学概論におけるビジュアル・ナラティヴ教材の活用:DIPExの患者インタビュー動画の有用性
著者:いとうたけひこ(和光大学)ほか

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第50回日本医学教育学会大会 1(2018年8月3日)

タイトル:患者と医療者の協働による医療コミュニケーション教材の開発
著者:射場典子(山梨大学、ディペックス・ジャパン)ほか

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第50回日本医学教育学会大会 2(2018年8月3日)

タイトル:個々の患者への適用を重視したEBM教育の実践報告~「患者の語り」の動画を活用して
著者:小橋元(獨協医科大学)ほか

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<2017年度>

a) 第49回日本医学教育学会大会(2017年8月18日)

ポスターセッション3:準備・教養教育,医学英語 2 P-3-02
タイトル:ディペックス・ジャパン患者の語りデータベースを教材として活用した教育事例
筆頭著者:射場典子(DIPEx-Japan)

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b) 日本看護学教育学会第27回学術集会(2017年8月17日)

交流セッション
タイトル(抄録):ディペックス・ジャパン患者の語りデータベースを教材として活用した教育事例
著者:射場 典子(DIPEx-Japan)・森田夏実(東京女子医科大学)・青木昭子(東京医科大学)

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<2016年度>

a) 第48回日本医学教育学会大会(2016年7月30日)

ポスターセッション3:Early Exposure P-3-01
タイトル:低学年の医学生・看護学生教育における「患者の語り」ビデオの有用性
筆頭著者:青木 昭子(東京医科大学)

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b)第48回日本医学教育学会大会(2016年7月30日)

口演 30:準備教育・教養教育O-30-03
タイトル:映像で視聴できる「患者の語り」を教材として活用した授業の一例
著者:射場典子(DIPEx-Japan)

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c)日本看護学教育学会第26回学術集会(2016年8月23日)

交流セッション20
タイトル(抄録):患者の語り(ナラティブ)から何を学ぶか Part 5 ―健康と病いの語り(DIPEx-Japan)の教育的活用の実際―
著者:射場 典子(DIPEx-Japan)・森田夏実(東京工科大学)

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d)日本看護学教育学会第26回学術集会(2016年8月23日)

交流セッション15
タイトル(抄録):患者の語りから何を学ぶかpart4 ―DIPEx-Japanを用いた医療者教育プログラム作成―
著者:佐藤 幹代(自治医科大学看護学部)

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患者の語りを教育に導入する意義

イギリスの著名な神経学者、オリヴァー・サックスは自身が担当した患者の体験に基づく著書を多数執筆していますが、「健康と病いの語りデータベース」がモデルとしているHealthtalkを教育に活用する意義について、次のように語っています。

ヘルストークオンラインの素晴らしいところは、さまざまな疾患を持ち、いろいろな方法でそれらに対処している多くの人々にあなたを引き合わせることができることです。それは生々しく、人間味にあふれ、驚くほど経験を豊富にするのです。実際個人では、ビデオが供給するのとほぼ同量の体験をすることはできませんから、これは素晴らしい教具なのです。

以前私は、一人の女性患者さんを学生たちに紹介して、彼女に自分自身について語ってもらいました。彼女は、「私のこの痛みを感じない腕、やけどをした腕を見てください。ラジエーターにもたれかかったときにやけどをしたのですが、私の腕は熱あるいは痛みに対する感覚がないので、やけどをしたことに気が付きませんでした」と言いました。彼女は続けて、「私は脊髄を侵す脊髄空洞症というまれな病気にかかっているのです」と言いました。さらに彼女は、「この疾患を、あなたの教科書の920ページに書かれているようなものとして記憶するのはやめてください。私の事を思い出してください。私が椅子に座っている様子、痛みを感じないやけど、私の物語を思い出してください。私のことを心に浮かべてください。私が脊髄空洞症そのものです。」と言いました。患者さんがもつ疾患のこのような具体化と患者さんの物語が、ヘルストークオンラインによって見事に伝わるのです。

例えばパーキンソン病のような疾患を、時には50ヤード離れたところからでも診断することができますが、実際にその疾患を持つ患者さんと向き合うことがとても重要です。要するに、その疾患を抱えてどの様に生活しているかを語ってもらうのです。その疾患の経験から得た知識、その疾患が与える影響、その疾患に対する対処の仕方は、出会う患者さんごとにそれぞれ異なります。それ故、あなたは、物語を語ってもらわなくてはいけません。さらに、ナラティブやヒューマンストーリーを聞くことは面白いし、患者さんはもっと居心地良く感じます。彼らは、尋問され、検査されるだけの対象物ではないのです。彼らは、あなたに自分自身について語ってくれるのです。